
(脳卒中の「兆候」ってどんな症状?)
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よく外来で皆様とお話をしていると「脳卒中の前触れ」「血管が切れる兆候」といった言葉を耳にします。また、テレビなどでも「○○は脳こうそく(梗塞)の前兆」といった表現を聞くことがあります。
皆様は、「脳の病気は怖いから、わずかな前触れを見逃さないようにして、前触れがあったら早く治療を受けないと大変なことになる」とお考えではないですか?
脳卒中には「前触れ」は原則としてありません。もしあるとすれば、それは「軽い発作」なのであって、だれもが「最初の発作が軽く済む」保証はありません。むしろ、初回の発作から重症で、「うまく治療ができても後遺症を残す」場合の方が多いのが実状だと思います。
ですから、「脳卒中にならない」ためには、「脳卒中の危険因子をできるだけ減らす」事が大切なのです。脳卒中の予防に関しては予防のページで。
ただし、一般にいわれているように、「(幸い初回発作が軽い発作で済んだ場合)それを見逃さず、再発作を防ぐための手を打つ」事は大変重要です。そこで、「どんな症状がでたら脳卒中を疑えばいいのか?」が大切になるのです。
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皆様の中には、「半年も前から頭がずっと痛いので血管が切れるのでは」と心配して病院を受診し、「CTでは何も異常がないので大丈夫ですよ」といわれ安心しつつも何となく不満足な気持ちで帰宅したご経験をお持ちの方がいらっしゃると思います。
人から「手足のしびれは脳こうそく(梗塞)の前触れ」と聞かされて、「最近足の裏がしびれるので脳こうそく(梗塞)なのでは」と心配して病院にかかったら、「これは心配ないですよ」とビタミン剤を出され、何となく腑に落ちない気持ちで帰宅した、なんてご経験の方も多いと思います。
また、診察の際に「(頭を打つと後から出ると聞いているので)「子供の頃頭を打っているのだけど」と医師に訴えたところ、医師から「そんなに時間が経ってから異常が起こることはありませんよ」を言われ、一般に言われていることとのギャップに悩んだご経験の方もいると思います。
私どもが外来診療をしていますと、「頭痛」「しびれ」「めまい」など多くの症状を訴えて患者さんが受診されます。皆様を診療していて日頃から感じていることの一つに、皆様の間にあまりにもあいまいな医学知識が広まっていて、それが誤解と混乱のもとになっていると思います。そこで、これらの「有名な」症状に関してはQ&Aのコーナーでもとりあげます。
特に、「しびれ」という言葉は非常に曖昧で、「力が入らない」のも「びりびりと痺れる」のも「感覚が鈍く判りにくい」のもみんなしびれという言葉で表されてしまいわけが分かりませんので注意が必要です。
頭痛:脳の症状としては有名ではありますが頭痛で発症する脳の疾患はごく限られたものです。
脳の周囲を走行する血管の一部と脳を包む膜(硬膜)の一部を除き、脳は原則として脳自身の感覚の神経を持ちません。そこで、一般に脳の疾患では頭痛は感じないのが原則なのです。
頭痛で発症する脳の疾患として代表的なのは「くも膜下出血」と「脳内出血の一部」です。くも膜下出血では、「何月何日何時何分に頭痛が起きた」とはっきりわかる、突発する激しい頭痛が特徴的で、頭痛の出現と同時に一時的に意識を失うことが多いことも特徴です。くも膜下出血は通常「麻痺」などの症状がないのが特徴です。
まれに「先がけ頭痛」という頭痛を感じる方がいるようです。これは動脈瘤が増大する際に感じる、あるいは動脈瘤からごくわずかに出血した際に感じる頭痛と考えられています。なにぶん「先がけ頭痛」は誰にでも感じるものではなく特徴的な頭痛でもないので、目安にはなりにくいのが実状です。脳内出血では通常頭痛はありませんが、非常に出血量が多い場合、または出血の一部が脳の内にある「脳室」という空洞にまであふれ出した場合、頭痛を感じます。この場合、頭痛とともに「麻痺」「意識障害」といった明らかな症状を伴う場合が多いのが特徴です。
麻痺(半身不随):最も代表的な脳卒中の症状です。
「脳こうそく(梗塞)」や「脳内出血」を起こした場合、多くの方が片半身が動かない(動きにくい)症状となります。人間の体は左半身は右脳が、右半身は左脳が命令を出して動かしています。そのため、脳の障害により起こる症状は原則として片半身に限られます。麻痺と同じ側の半身の感覚障害を伴うことがあります。
感覚障害:麻痺と同様半身の感覚障害も代表的な脳卒中の症状です。
「脳こうそく(梗塞)」や「脳内出血」の場合麻痺と同時にその半身の感覚異常が起こることがあります。麻痺を伴わず、感覚異常だけが出る場合もあります。感覚異常は「腕に強い」「足に強い」といった差はあるものの、半身全体に出ることが殆どで、体に一部分(足の裏だけ、指だけなど)や両手足の同じ部分(両足の足首から先など)といった形では現れないことが原則です。
感覚障害には「感覚が鈍い」(温かいお湯が冷たく感じる)、「感覚が過敏」(ぬるいお湯が熱く感じる)、「異常感覚」(触っているだけなのに痛く感じる)といった種類があります。
言語障害:言語障害も代表的な脳卒中の症状です。
「脳こうそく(梗塞)」や「脳内出血」により言語障害を起こすことがあります。言語障害には、言語の中枢自体が壊れてしまう「失語症」と言葉は理解できているが舌やのどが麻痺しているためうまく発音できない「構音障害」があります。失語にはさらに、言葉を理解する中枢が壊れてしまい言葉が理解できない「感覚性失語」と頭の中の考えを言葉に置き換える中枢が壊れて言葉を考えつくことができない「運動性失語」などがあります。
失語症は周囲の方からは理解されにくく、また患者さん本人は状況の判断はできていることが多い(知的には問題がない)ため、非常にご本人が焦りを感じることが多いのです。失語症を理解するには、英語がしゃべれない人がアメリカに突然連れて行かれた状況を想像して下さい。周りの人が何かしゃべりかけてくるのですが何を言っているのかさっぱり理解できない(感覚性失語)、そして何かを聞こうとするのですがその言葉が思いつかない(運動性失語)のです。だから、相手が言っていることをオウム返しでしゃべったりする場合もあります。
視野障害:視野が狭まるのも典型的な脳の症状です。
視野障害はちょっと変わっていますので理解しにくいかもしれません。視野に関しては、右目も左目も、視野の右半分は左脳、左半分は右脳が支配しています。ですから、例えば右脳の障害では、右目でも左目でも左半分が見えない(同名半盲と呼びます)状態が起こります。
また、視野が狭くなる(正面は見えるのに両脇が見えにくいなど)も、脳や神経の一部に問題がある場合があります。
めまい:「めまい」という言葉はいろいろな症状を含んでいます。そのうちのごく一部が脳に起因するめまいです。
めまいを大きく分けると「ぐるぐると回る・目の前の景色が流れていく」めまい、「体がぐらぐらして立っていられない、ふらついてまっすぐ歩けない」めまい、「フワーとして気が遠くなるような」めまいなどがあります。最も多いのが回転感を伴う「ぐるぐるめまい」で、これは殆どの場合耳の奥の「内耳」に問題があり、脳には関係ありません。(「メニエル氏病」が代表です)「フワーとするめまい」も血圧の変化(立ちくらみ)などが原因の場合が殆どです。問題となるのは「ぐらぐらとするめまい」で、これは「酔っぱらいの人がまっすぐ歩けない」状態に似ています。
失調(ぎこちなさ):手や足がスムースに動かせない状態です。
小脳に異常が起こると手足がスムースに目的のところに行かず、動きがぎこちなくなります。茶碗をとろうとしても、手が目的の場所を通り過ぎてしまい隣にあったコップを倒してしまう、などといった症状が典型的です。見た目には、ロボットのようなぎこちない動きや歩きとなります。
意識障害:脳に異常が起こると重い場合には意識障害が起こります。
人間の脳は元々は眠っているようにできています。これを意識中枢で「無理矢理起こしている」のです。意識中枢に異常が起こると、「刺激がないと眠ってしまう」ようになり、重症になればなるほど「強い刺激」でないと覚醒しなくなります。重症の脳内出血や脳こうそく(梗塞)(特に脳底動脈という脳幹に血液を送る血管の脳こうそく(梗塞))で起こります。
痴呆(ぼけ):痴呆や物忘れは脳卒中の症状とは関係ないことが殆どです。
ちょっとした物忘れは基本的には年齢に伴う変化で特に病的な意義は少ない事が多いです。ただし、「病的な物忘れ」は痴呆の症状です。痴呆(ぼけ)は年齢による変化のことも多いのですが、ごく小さな無症候性脳こうそく(梗塞)が多発する「多発性脳こうそく(梗塞)」の症状として現れることもあります。「多発性脳こうそく(梗塞)」による痴呆は、段階的に進む痴呆で、経過中一時的には麻痺や言語障害といった脳卒中の症状が出ることが特徴です。
手のふるえ(振戦):手のふるえも脳卒中の症状とは関係ないことも多い症状です。
手のふるえの多くは「本態性振戦」といって年齢によるものです。しかし「多発性脳こうそく(梗塞)」の症状としての「パーキンソン症候群」による手のふるえの場合もあります。いづれの手のふるえも薬で改善が可能な場合がありますので、日常生活に支障がある場合は専門医にご相談下さい。