
脳動脈硬化に対する血管形成術
脳動脈硬化による血管狭窄に対しては、バルーン(風船)付のカテーテルによる血管形成術が行われています。
動脈硬化による血管狭窄では、血管の壁に「プラーク」と呼ばれる脂肪や繊維が沈着して血管を狭くしている部分があります。こういった異常部分をバルーンでつぶして血管を広げます。

問題は、バルーンで押し開いただけでは、また狭くなってしまう(再狭窄する)場合があることです。そこで、狭い場所をバルーンで開いた後は、再狭窄を予防するために血管の中に金属製の柱(ステント)を残して、狭窄血管の再狭窄を予防のが主流です。頭の中(脳)の血管に使えるステントは限られているので、なかなかこのような治療も難しいのが現状です。
首の血管(頚動脈)においては、平成19年9月に頚動脈に対して使えるステントが認可され、平成20年4月からは健康保険でも認められましたので、「頚部頚動脈血管形成・ステント術」(略してCAS=「キャス」と呼んでいます)が広まりつつあります。
脳の血管や頚動脈に血管形成術を行う場合、血管の中にあるプラークをバルーンで押しつぶして血管の狭い部分を拡げるわけですから、いくつかの問題点があります。
第一には、血管には弾力があるので、バルーンでプラークが十分に潰されずに血管全体が一時的に広がってしまうだけで、バルーンでの拡張が終了するとともに血管の弾力で狭窄が元に戻ってしまう「弾性再狭窄」と言う現象があります。この現象は、大なり小なり全ての症例で起こりますので、特に太い血管では、ステントで拡張した状態を保つことが重要となるわけです。
第2には、バルーンで押しつぶされたときにできるプラークの破片が脳へと流れてゆき、脳梗塞を引き起こすことがあります。これも、頚動脈のように太い血管の治療では多量の破片が出る場合がありますので、重症の脳梗塞を引き起こしてしまう場合があります。

平成20年4月に新しく認可された「頚部頚動脈血管形成・ステント術(CAS)」は、首の血管に入れても自由に曲がることができ、血管の拡張を保つことができる柔軟なステントや、プラークの破片が脳へと流れて行かない様に破片を回収する「フィルター」の開発に伴い、可能となりました。

ジョンソン アンド ジョンソン/コルディス社製フィルター(アンジオガード)

フィルターは狭窄部より下流側に一時的に留置して、拡張によってできたプラークの破片が脳に流れることを防ぎます。このフィルターは、治療が終了したところで回収します。しかし、全てのプラークの破片を回収することは不可能で、このような対策を行っていても、脳梗塞を完全に予防することはできないのが現実です。

ジョンソン アンド ジョンソン/コルディス社製ステント(プリサイス ステント)

ステントは首の動きなどに対して柔らかく曲がることができるように、形状記憶合金でできていて、細い管の中に圧縮された状態で準備されており、血管をバルーンで拡張した後、狭窄部でステントを圧縮している管(さや)からステントを出して留置します。
頚部頚動脈血管形成・ステント治療は、手術時間は比較的短いことが多いのですが、熟練の必要な手術になります。
また、新しい治療として保険に認められる際に、安全に治療が実施されるため、この治療を行なえる施設(病院)、医師などに関する非常に厳しい条件があります。そのため、国内の病院の中でも、この治療が可能な病院はある程度限られているのが実情です。