脳血管内治療に関する新しい情報

 

 

生体反応性コイル(バイオリアクティブコイル)の販売が認可される(平成20年8月)

コイルを用いた脳動脈瘤治療(脳動脈瘤塞栓術)は、「脳動脈瘤塞栓術」のページでもご説明したように、瘤の中に留置したコイルが圧縮・変形して動脈瘤が再発する(コイルコンパクション)することがあるため治療効果がクリップ手術と比べると劣るという欠点がありました。こういった欠点を克服するため、コイルの一部に生体反応性(バイオリアクティブ)の樹脂を用いたコイルが認可されました。これによって、コイルによる脳動脈瘤塞栓術の長期的な確実性が向上することが期待されています。


頚部頚動脈狭窄症に対する「頚部頚動脈血管形成・ステント術(CAS)」が健康保険で認められる(平成20年4月)

わが国でも生活の変化に伴い、メタボリックシンドロームなどが問題となり、全身の血管のアテローム性動脈硬化症の増加が問題となってきています。
心臓の血管の狭窄による心筋梗塞や頚部頚動脈の狭窄による脳こうそく(脳梗塞)は、これまではは欧米人に多く日本人には少ないと考えられてきましたが、最近の報告ではわが国でも欧米と同様の発生率となっています。

欧米では数年前から実施することが認められ、広く実施されていた頚部頚動脈(首の部分の頚動脈)に対する経皮的血管形成・ステント術が、健康保険にて認められ、実施することが可能となりました。

これまでわが国では、頚部の頚動脈狭窄に対する治療は、「頚動脈血栓内膜剥離手術(CEA)」と呼ばれる頚部を切開して、血管を直接切開して狭窄を直す手術のみが認められていたのですが、今回「頚部頚動脈血管形成・ステント術(CAS)」が認められることにより、患者さんにとっての治療法の選択肢が増えました。
ただし、この治療を安全に行うためにいくつかの条件が決められていて、これらの条件を満たした病院や医師でないとこの治療を行うことは認められていません。「日本脳神経血管内治療学会」の専門医が勤務する施設の多くは、これらの基準を満たしています。

治療に関する詳しいことは「脳動脈硬化に対する血管形成術」のページをご参照ください。


破裂脳動脈瘤に対する治療法に関する多施設共同研究の結果(国際破裂動脈瘤臨床試験ISAT:ヨーロッパ、カナダにおける、破裂脳動脈瘤に対するクリッピング手術とコイル塞栓術の成績比較試験の結果 The LANCET誌:平成14年10月)

イギリスのオックスフォード大学が中心となり、ヨーロッパ、カナダの44の大規模施設において、破裂脳動脈瘤(くも膜下出血)の患者様のうち、クリップ手術とコイル塞栓術のどちらでも治療が可能と判断された患者さんを、「無作為に(アットランダムに)」分けて治療を行い、2つの治療法の、破裂脳動脈瘤(くも膜下出血)に対する治療法としての安全性と有効性の検討を行いました。
対象となった患者様の数は合計2143名で、1070名の方がクリッピング手術を、1073名の方がコイル塞栓術を行うこととなりました。それぞれの治療をお受けいただいた方の2か月後、1年後の治療結果、状態を評価しました。
その結果、治療1年後の時点で重い後遺症が残る、または死亡した方が、クリップ手術を受けた方で30.6%であるのに対して、コイル塞栓術を受けた方は23.7%と、治療一年後の無障害生存率がコイル塞栓術の方が高いことが明らかになりました。

この結果は、これまでは「限られた動脈瘤の部位においては有効である」とされていたコイル塞栓術が、「無作為」に分けても効果的、つまり「コイル塞栓術が可能な動脈であれば、クリップ手術よりも良い結果となる可能性が高い」ことが明らかにされた、画期的な報告です。


また、未破裂脳動脈瘤の破裂の危険性(自然歴)に関する、新しいデーターが発表されました。詳しくは脳卒中に関する新しい情報をご覧ください


日本脳神経血管内治療学会専門医制度

平成13年度より日本脳神経血管内治療学会にて専門医制度が発足しました。

認定医制度とは?

いろいろな分野や治療を専門とする医師の集まりである「学会」が、その専門分野において一定の基準を満たす実力を持つ医師に対して、「学会」としてその能力を認める(「認定」)制度。
その分野の専門家として一定の実力を持つ事を認定する「専門医」と、その分野の中でも指導者として充分な実力を持つことを認定する「指導医」とがあ ります。
専門学会によって、「専門医」のみを認定する学会(「日本脳神経外科学会」など)と、「専門医」「指導医」をそれぞれ認定する学会(「日本救急治療学会」など)がある。

「専門医」「指導医」の認定を受けるには、学会が定める一定の経験や知識(試験があります)を満たしている必要性があります。平成13年に、全国で 48名 の医師が日本脳神経血管内治療学会認定「指導医」として認定を受け、この制度が発足しました。平成14年1月には第一回の専門医試験が行われ、全国で109名の専門医が誕生しました。その後の試験で新たに認定された医師を含め、 平成20年12月現在では専門医496名、うち指導医104名の医師が「脳血管内治療のスペシャリスト」として、全国で皆様のお役に少しでも立てるよう、日夜努力を続けています。
我が国における脳血管内治療の安全な普及、技術の向上や皆様への正確な情報提供など、我が国の医療の発展と皆様の健康な明日を目標にできる限りの努力をいたす所存です。よろしくお願いいたします。

「専門医・指導医」につきましては、NPO法人 日本脳神経血管内治療学会のHP(「専門医制度」→「指導医名簿」へとお進み頂けば、全国の指導医が所属施設を含め公開されています)をご参照ください。