
脳卒中の治療(2)
脳内出血の治療
脳内出血とは「脳の深部に行く細い血管(穿通枝)が切れて、脳の中に血腫を作る」状態であることはすでにお話ししました。
脳内出血では、出血と同時に出血した部分の脳は破壊されてしまうため、たとえ血の塊(血腫)を取り除いても、すでに血腫で破壊された脳は直らないことを理解することが、治療を理解する上でとても大切なのです。
「脳内出血」とは、読んで字のごとく「脳の内出血」なのです。
ですから、脳内出血の治療は、他や足をぶつけたときにできる「皮膚の内出血(あざ)」に対する治療の基本が、出血があまりに多くて困る状況でない限り @内出血がどんどん広がらないように安静にする、A 出血の周りの腫れを最小限におさえるために冷やしたりする事であるのと、基本的な考え方は同じです。
脳内出血の治療の基本は:
のが原則です。
しかし、実際にはあまりに血腫が大きいと脳を圧迫して押し殺してしまう(脳ヘルニアといいます)場合もあり、このようなときは緊急で頭の骨を開けて「血の塊をとる」手術が必要なこともあります。
しかし、この「開頭血腫除去」の手術は、緊急で患者さんの全身の状態もよく判らない状態での手術になりますので手術自体の危険性が高くなります。また、脳の中の血腫をとるまでには脳自体の中を切り進んでいくことになるため、脳のダメージがとても大きくなりやすいという欠点があります。ですから、この方法は、血腫があまりに大きくて生命に危機が迫っているような場合に行われる「最後の手段」とお考え下さい。
そこで、頭蓋骨に局所麻酔で小さな孔を開けて、その孔から細い管で出血した血液だけを吸い取る「定位的血腫除去」という手術が開発されました。(下のアニメーションを参照下さい)

この方法では、目的地に確実に針が刺せる「定位的脳手術フレーム」という特殊な枠を頭に取り付け、CTを使って管を刺す位置を決めて、その場所(ターゲット)にめがけて管をさして血腫を吸い取ります。ただし、この方法でも「脳の破壊されたところが治るわけではない」事に変わりはありません。あくまでも、血腫が自然に吸収されるよりも早く脳の圧迫をとることができるため脳のむくみによる症状が軽く済む、リハビリテーションが早くから始められる、などといった効果が期待できるのです。
逆に欠点として、あくまでも(直接出血した血管を確認したりすることは不可能で)盲目的な手術のため、血腫をとることにより、いったん止まっていた出血が(傷のかさぶたを剥いだように)再び出血してしまう(再出血)危険があり、再出血が起こってしまうと逆に症状が悪化してしまう危険があることです。
そのため、この手術を行った方が良いか?、あるいは行わない方が良いか?、いつ行うか?は議論もありますし、実際にはそれぞれの患者さんの全身の状態、血腫の量、症状などを総合的に判断して治療を行います。手術的な治療を行わなくても良い(または残念ながら手術してもお救いできない)状態であれば、点滴薬などの内科的治療が中心となり、必ずしも脳神経外科医が治療を行わない場合もあります。
ただし、脳内出血の患者さんの全てが「脳動脈硬化」によるものとは限らず、脳の生まれつきの血管奇形(脳動静脈奇形)や他の全身の病気などが隠れていることがあります。脳内出血にかかった方は、一度は専門医(脳神経外科医、神経内科医)の診察をお受けになることをおすすめします。