
Q&Aのコーナー
認知症(痴呆、ぼけ):最近物忘れが増えて心配…アルツハイマーだったらどうしよう…
Q:最近物忘れが…「ぼけ」の始まり?
A:人間の記憶には「昔からの古い記憶」と「最近数日間の短い記憶」があります。記憶の仕組みを簡単にたとえると、皆さんの家の「押し入れ」と「茶の間の小物入れ」の関係だと考えて下さい。つまり、日頃の生活の中で「記憶する物」はとりあえず「小物入れ」にしまっておきます。それらの中で「特に大切な物、長い間とっておきたい物」は改めて、「押し入れ」にしまい込むわけです。「茶の間の小物入れ」は、いつも細々とした物が入れてありますから、どうしてもいっぱいになってきてしまうので、時々整理して捨てて行く(忘れる)わけです。どうしてもお年をとっていくと「茶の間の小物入れ」は一杯になってきてしまうので、少し前に入れた物も出していかないと次の物が入らなくなってしまう(つまり「うっかりもの忘れ」をしてしまう)のです。
人によって「物覚えのいい人」「暗記の得意な人」がいるのは、こういった整理整頓の得意な人と不得意な人がいるからなのです。
もし、「押し入れ」や「茶の間の小物入れ」のふたが壊れてしまったら、どんどん中のものが出てきてしまいます。これが病的な「認知症」となるわけです。
Q:最近、夜眠れないので「安定剤」を時々のんで寝ています。でも、「安定剤をのむとぼける」とか「安定剤を飲むとくせになる」と人から聞いて心配です。
A:一般に「安定剤(睡眠剤)」と呼ばれるお薬には、@「睡眠剤」 A「睡眠導入剤」 B「抗不安剤」などがあります。
お薬の種類によって、習慣性(くせになる)程度などに多少の差はありますが、我が国で今使われているお薬は基本的に安全なお薬ばかりです。実際には、「安定剤」の処方にあたっては、担当医はそれぞれの性質を使い分けて患者様に提供しているのです。
簡単にそれぞれのお薬の特徴などをご説明いたします。
@「睡眠剤」 昔から「眠り薬」と呼ばれるもので、眠りを継続するためのお薬です。「寝付きは良いがすぐ目が覚めてしまう」「いったん寝付いても夜中に目が覚めてしまう」といった症状に対して使います。比較的ゆっくりと長時間効いているので、「夜中にトイレに目が覚めにくくて間に合わなくなってしまう」「夜中に目が覚めたときに寝ぼけてしまう」「翌日の朝まで効果が残ってしまい午前中ボーとしてしまう」などといったことがあり、「ぼけ」と間違われることが多い傾向があります。
A「睡眠導入剤」 最近比較的多く使われているお薬で、寝付きを良くする効果があります。「布団に入ってもなかなか寝付けない」といった方に処方します。のんで短時間(30分くらい)で効いてきて眠りにつけるかわりに、3時間くらいでお薬の効果そのものは切れてしまうのが特徴です。「夜中に、いったん目が覚めてしまうと眠れない」ために、夜中にトイレに起きる習慣のある方では熟睡感が少ないといった傾向があります。また、翌日には残りにくいのが特徴ですが、患者様によっては「翌朝ぼーっとする」事もあります。
B「抗不安剤」 読んで字のごとく「不安感を取るお薬」です。「マイナートランキライザー」と呼ばれる精神安定剤の一種で、副作用として「眠くなる」作用があります。非常に作用が緩やかで、「眠くなる」以外には副作用も少ないために、「眠るためのお薬」として処方されることの非常に多いお薬です。
いずれのタイプのお薬も、一般に言われるような「ぼける」副作用はありません。しかし、日頃患者様を診療していると、「お年寄りは早く眠るもの」といった固定観念と、「早く眠ると(当たり前ですが)夜中に目が覚めてしまう」ことから「安定剤」を多用してしまう方を多く見かけます。
お薬は決して毒ではありませんが、飲まなくてすむなら飲まない方がいい「必要悪」であるには事実ですから、お薬とは上手におつきあいして、必要最小限で済ませることは大切です。日中お仕事をしている量の少ないお年寄りでは、若い頃のように一日8時間も10時間も眠れない方がほとんどです。「眠れない」からと言って、眠くならない早い時間からお布団に入ってしまえば、(布団の中で横になっているだけでも体の休息はとれてしまうので)余計夜中に目がさえてしまう結果となります。上手な睡眠の習慣を作ることが大切です。
それと、お薬を使えば誰でも、簡単に眠りにつけます。そのため、ついつい「お薬で寝ついた方が楽に寝つけるので、お薬に頼ってしまう」習慣になってしまいます。この現象を「精神的依存」といいます。これは、上手にお薬とおつきあいし損ねてしまう代表例です。繰り返しになりますが、「お薬の性質」と「ご自分の睡眠障害のタイプ」を理解して、上手に「安定剤」とおつきあいしましょう。
最後に、「安定剤」の一部にはアルコールと一緒に飲むと「逆に興奮する」「幻覚をみる」といった傾向があるお薬があります。「安定剤」を飲むときはアルコールは控えるようにしましょう。