
脳の病気と治療に関する新しい情報
このページでは、新しく開発された薬の情報、新しく開発された治療法など、脳卒中の予防や治療にとって大切と思われる情報を、出きる限り早い時期にご提供します。
最近の医学の領域においては、EBMというキーワードが非常に重要視されています。EBMとは「エビデンスに基づく医学」という内容の英語の頭文字で、手術、投薬などの医療は「エビデンス」に基づいて行うことが大切である、ということです。「エビデンス」とは、「ある医学的事実に対する臨床的、学問的な証拠、裏付け」のことです。
いまさら「学問的裏付け?」と不思議に思う方も多いかもしれません。しかし、例えば「頭が痛いのに間違って胃の薬を飲んだら効いた気がしていた…間違って薬を飲んだことに気づいたらまた頭が痛くなってきた」などといったことは、私どもの日常でもよく経験します。こういった、その薬が効かない病気にまで、(患者さんが効くと信じてのんだ場合)効いたように感じてしまうことを「偽薬(プラセボ)効果」といいます。
そこで、薬や治療の効果や医学的事実に関して、本当に効果や違いがあるのか?無いのか?は、薬を飲まない患者さんと薬を飲んだ患者さんとを平等に比較して初めて明らかとなります。例えば、「ある薬や治療が、何かの病気に対して効果がある」と考えられる場合でも、「理論的にこの薬を飲めば違うはずである」という理論と動物実験での効果、副作用の判定をもとにして薬は開発、認可、発売されます。こういった中で、実際に多くの患者さんを対象に「本当にその薬は対象とした病気に効くのか?」が明らかになった場合、その薬は、「その薬の効果に対しての裏付け=エビデンス」のある薬となるわけです。
例えば、「脳梗塞後の認知機能の低下症状」に効果があるとする薬が、以前はたくさんありました。これらの薬の多くはすでに販売中止となりました。これらの薬は、理論上は「効くはず」の薬でありましたし、実際の我々医師の経験上は
明らかな効果を示す患者様もいらっしゃいました。しかし、発売後に、効果に関する追跡調査を行ったところ、「使った患者様と使わなかった患者様の間で大きな差がなかった」事を理由に発売が中止されたわけです。
また、くも膜下出血の原因となる「脳動脈瘤」は人口の約3%程度の方に見つかります。この事実は、多くの病気でなくなった方の脳を調べることによって明らかとなっています。(エビデンスがある) ですから、単純計算で、脳ドックをお受けになる方の30人に一人は脳動脈瘤が発見されるわけです。脳ドックなどで脳動脈瘤が発見されたとき、その?動脈瘤が破裂する確率はどのくらいあるのかは関してもある程度のデータが明らかとされています。(エビデンスがある) しかし、その破裂の確立は必ずしも高くないので、手術のリスクを犯して予防的に手術をしたほうが良いのか? そのまま様子を見たほうが良いのか?に関するデーターはない(エビデンスが無い)ので、判断が難しい訳です。
これに対して、脳卒中を引き起こした事がある方に対してコレステロールを下げる治療を行うと脳卒中の再発リスクが下がる事は、これまでの研究で明らかとされています。(エビデンスがある) そこで、脳こうそくを起こしたことがある方に対してコレステロールを下げる治療を行うことは、学問的にその有効性が裏づけされており、迷うことが無いわけです。このように、学問的研究によるデーターに基づいた治療を行うことを、EBMと呼びます。
このHPでは、できるだけ「エビデンス」の確立した内容を中心に、皆さんにお届けしたいと思います。しかし、「最新の治療法、新薬」とは逆に言うと「エビデンスのまだ確立されていない治療法、薬」である可能性があることもご理解下さい。